WRAP®(元気回復行動プラン)とは
WRAP®(ラップ)はアメリカの精神障害をもつ人たちによって作られたリカバリー(元気回復)に役立つツールです。日本語では「元気回復行動プラン」と呼ばれています。
「WRAP®」は、Wellness(元気)・Recovery(回復)・Action(行動)・Plan(プラン)の頭文字を取って「WRAP®(ラップ)」といいます。
精神的な困難を抱えた人たちが自分らしくあり続けるために自分で作る行動プランです。
くさのねっとには、アメリカのAHP認定WRAP®ファシリテーターが2名在籍しています。

リカバリーの
キーコンセプト
リカバリーのキーコンセプトには、「希望」「自分の責任(主体性)」「学ぶこと」「自分を権利擁護すること」「サポート」の5つがあります。
人がリカバリーをしている時、人は「希望の感覚」をもっていて、他者や環境に巻き込まれず、刺激に対して反射するのではなく、反応するための「主体的に選ぶ力」をもっており、自分には「学ぶこと」ができ、成長できるのだと自覚し、「自分の大切を、大切にするために伝える力」をあきらめることなく、他者と「サポート」し合える関係にある時、人は自分自身の人生や生活のなかでの困難なことがあっても、リカバリーのサイクルをまわしていきます。
逆に、自分には力がないと感じ、学ぶことや自分の意志を前に出すことをあきらめ、サポートに手を伸ばすことをためらっている時、リカバリーがうまく進んでいないかもしれません。
リカバリーのための
行動プラン
WRAP®では、状況に応じた行動プランを作成していきます。
【元気に役立つ道具箱】
元気であるために、または気分の優れない時に元気になるために、これまでやってきたこと、またはできたかもしれないことをリストにします。これらのリストの内容を「道具(ツール)」として使って自分のWRAPを作っていきます。
(例)音楽を聴く、頓服薬を飲む(調子が悪くなる前に)、人に話を聞いてもらう、など
【日常生活の管理プラン】
元気を保つために毎日しなければならないことを書き出して、忘れずに毎日実践します。調子が悪くなった時、“何をしていたら元気だったか”を思い出させるのに役立ちます。
(例)規則正しい生活(食事をきちんと摂る、風呂に入る、テレビを観る)の実践、就労移行の仲間と話をする、タバコを吸って楽しい時間を過ごす、など
【引き金とプラン】
引き金(=もしそれが起きると気分が悪くなったり、調子を乱すきっかけになったりするような出来事や状況)となる出来事が起きた時にどうするか、のプランを立てます。
(例)睡眠不足の時、人混みの中、など
そして、引き金が起こった時に、これをすれば乗り切れる、と思うことのリストを作る。
(例)睡眠を十分に取る、誰かに相談する、など
【注意サインとプラン】
外部からのストレスとは関係なく自分の中で起こる変化や兆候(注意サイン)に対し何か行動をしなければならない場合を想定して、自分が気付いている注意サインのリストを作ります。
(例)胃が痛くなる、朝すっきり起きられない、他の人や物音が悪口に聞こえる、など
そして、注意サインに気付いた時、それ以上悪くなるのを防ぐためにすべきことのリストを作ります。
(例)ゆっくり寝る、頓服薬を飲む、今自分の調子が悪いと意識する、など
【調子が悪い時のプラン】
調子がとても悪く、かなり深刻だ、と思う時の気分や行動のリストを作ります。
(例)嫌なことが頭の中を巡る、眠いのに眠れない、全く眠くならない、イライラして怒鳴ってしまう、など
そして、自分の調子が悪くなってきた時に、毎日することの行動プランを書きます。
(例)いつもの生活パターンを壊さないようにする、主治医に相談する、<日常生活の管理プラン>に挙げたことを行う、など
【クライシスプラン】
自分のケアの責任を他者に委ねなければならないような緊急の場合(クライシス)に、どのようなことをしてもらいたいか、周囲の人に指示を与えるリストを作ります。
(1)良い状況の時の自分について
(2)誰かに責任を任せなければならない時のサイン
(例)全くしゃべらなくなる、物事を被害妄想的に捉える、など
(3)責任を任せたい人、任せたくない人は誰か、例えば友人、家族、主治医、支援者など最低5名あげておきます。
(これらの人たちに、リスト化してよいか意思確認をしておき、また、加わってほしくない人の名前とその理由を書いておくのも良い方法です)
(4)医療・保健・福祉関係者の連絡先と薬の情報
(5)受けても良い治療と受けたくない治療
処方内容に関する希望や、役に立った代替的な治療、役に立たなかった治療も記しておきます。
(6)自宅・地域でのケア、一時休養プラン
入院が最善でない場合のために、自宅や地域で必要な支援が受けられるよう、地域の社会資源を調べておきます。
(7)入院しても良い病院、したくない病院
(8)他人がしてくれると役に立つこと、逆に余計に気分が悪くなることのリスト
(例)他人からは話しかけて欲しくない、家族から話しかけて欲しい、など
(9)クライシスプランに従わなくて良くなったことを示すサイン
(例)よくしゃべる、冗談を言う、妄想を妄想と認識できる、身の回りのことができる、など
【クライシス脱出後のプラン】
クライシスを脱した後は、まだ様々な問題が存在しており、性急に元の生活に戻すのは危険です。したがって、順調な回復のためにこの時期のプランについて、クライシスに陥る前に考えておく必要があります。
・“クライシス脱出後のプラン”を使う状況だと判断するのはどのような時か?
・あらかじめ対応しておくと回復しやすくなること
・責任を取り戻すまでのスケジュール表
